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特集 片頭痛

発行日 2023-03-01 / 発行年 令和5年

Vol.31,No.1  

片頭痛は支障度の高い一次性頭痛です。世界保健機関(WHO)は、片頭痛は健康寿命を2年縮め、さらに2019年の報告では障害調整生存年数へ影響する脳神経疾患のうち片頭痛は13.1%と、脳卒中の47.3%に次いで多く、認知症の9.5%を上回ります。わが国の片頭痛患者は約840万人と推定されており7割以上で支障度が高く従来の片頭痛治療では不十分な治療効果、有害事象によるアドヒアランス低下が問題になっています。
片頭痛の治療は急性期治療薬(頓挫薬)と予防薬をバランスよく使用します。頓挫薬としてはアセトアミノフェン、NSAIDs、トリプタンを頭痛の程度によって使い分けます。予兆時の内服はせずに頭痛発作開始時に内服します。起床時又は生理と重なり激しい頭痛が起こる場合は、NSAIDsとトリプタンを同時に内服することも可能です。また、心血管系の合併症のためトリプタンが使えない患者やトリプタンに反応しない患者へは、ジタン系のラスミジタ(レイボー錠®)ンが急性期の新たな薬剤として使用できるようになりました。また、トリプタン系等とは異なり、1時間が経過した頭痛に内服しても効果が得られています。
頭痛治療では頓挫薬とともに予防薬についても検討します。片頭痛発作の発症抑制にはバルプロ酸ナトリウム、インデラル、ロメリジン、ベラパミル、アミトリプチリンなどの従来薬をまず使用します。群発頭痛にはベラパミル、緊張型頭痛にはアミトリプチリンが適応外使用可能です。従来薬が効果不十分あるいは認容性がない片頭痛では、抗CGRP抗体のガルカネズマブ、フレマネズマブ、あるいは抗CGRP受容体抗体のエレヌマブを検討します。

心不全の薬物治療 update

発行日 2022-04-01 / 発行年 令和4年

Vol.30,No.1 

慢性心不全は、患者数が増加しており予後不良な疾患です。慢性心不全治療薬は、新規治療薬の登場などにより、大きな変革期を迎えています。
慢性心不全は、左室駆出率(LVEF)に基づきHFrEF(heart failure with reduced ejection fraction)、HFpEF( heart failure with preserved ejection fraction)、HFmrEF(Heart Failure with mid-range Ejection Fraction)の3つに分類されます。
HFrEFでは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)といった生命予後を改善させる薬物療法が確立されており、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、SGLT2阻害薬、HCNチャネル遮断薬といった新規薬剤のエビデンスが出てきています。また、最近承認された、sGC刺激薬のペルイシグアトはガイドラインにはまだ掲載されていませんが、大規模臨床試験の結果からはステージCのHFrEFタイプの心不全の治療薬として基本治療薬への上乗せ効果が期待されています。
HFpEFに対しては、大規模臨床試験で予後改善を示した薬剤は一つもありませんでしたが、最近、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンで初めて心血管イベントの抑制効果が報告されました。

特集 知っておきたい感染症 『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)』

発行日 2020-07-27 / 発行年 令和2年

Vol.29 No.1 

2019 年12 月に中国武漢に端を発した新型コロナウイルス感染症は、過去ヒトで感染が確認されていなかった新種のコロナウイルス(SARS-CoV-2)が原因の感染症です。ヒトに感染するコロナウイルスは従来、風邪のウイルス4種類と重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の合わせて6種類が知られていました。COVID-19の潜伏期は、約5日、最長14日程度で、遷延する発熱を主体とする上気道炎症例、肺炎症例、発症8日以降に呼吸不全が進⾏し急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を併発して更に重症化する症例があります。病原性はMERS やSARS より低いレベルと考えられています。重症例は主に⾼齢者で認められ、また、重症化しやすい要因として、高血圧などの循環器疾患、糖尿病、喘息やCOPD などの呼吸器疾患、がん、各種免疫不全、人工透析などが考えられます。妊婦が重症化しやすいかどうかは不明ですが、子宮内感染を来す可能性が報告されているため十分な注意が必要です。
新型コロナウイルスは、主に飛沫および接触でヒトーヒト感染を起こすと考えられていますが、空気感染も否定できないようです。

食と健康シリーズ2 フレイル対策

発行日 2019-09-01 / 発行年 令和1年

vol.28,No.2 

フレイル(frailty)とは、不可逆性の強い要介護状態の前段階であり、その概念には、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可能性が含まれています。また、サルコペニアのような身体的問題のみならず、うつ状態や認知機能障害などの精神・心理的な問題や、独居や経済的困窮などの社会的問題を包含しています。この要素が相互に関連しあい、どれか一つが悪化しても要介護状態になる危険性があります。したがってフレイルを多角的に評価し、その要因を治療方針や治療の遂行に反映していくことが課題になります。
 高齢者は、複数の慢性疾患を抱え、多剤併用になることが多いため、薬剤・ポリファーマシーが生活機能を低下している場合があります。筋肉障害、骨障害、転倒、錐体外路症状、末梢などの神経障害、精神障害などリハビリテーションに影響を及ぼすと考えられる副作用を有する薬剤の影響も考慮しながら薬剤管理を行う必要があります。

食と健康シリーズ-1 「糖質制限」

発行日 2019-03-01 / 発行年 平成30年

vol.28,No.1 

2010 年代になり、エネルギー制限食や脂肪制限食という 20 世紀に席巻していた食事療法が衰退するにつれ、今、注文を集めているのが“ロカボ”という食事法です。ロカボとは、「緩やかな糖質制限食」のことです。1 食当たりの糖質量を 20g 以上 40g 以下にし、それとは別に 1 日に 10gの糖質で、1 日の糖質が 130g を越えないように、お腹いっぱいになるまでおいしいものを食べるように心がけるという食事法です。お腹いっぱいになるまで食べたら(エネルギー無制限なんて指導をしたら)肥満になるのは、高血糖食のときにのみ生じることです。高蛋白質食や高脂肪食のときには、食後のグレリン(空腹感を感じさせる消化管ホルモン)は長く抑制されます。また、食後のペプチド YY(満腹感を感じさせる消化管ホルモン)は長く分泌されています。一方、高血糖食では食後、すぐにグレリンの分泌が復活してお腹が減り、すぐにペプチド YY の分泌が低下して満腹感が消失します。ロカボとは、意識(大脳皮質)において摂取エネルギーを制限するのではなく、満腹中枢(視床下部)において摂取エネルギーを制限させる食事法なのです。

医薬品副作用解説 -20 がん患者でみられる副作用(口内炎)

発行日 2018-12-01 / 発行年 平成30年

vol.27,No.2 

化学療法の40%程度に、口内炎をはじめとする粘膜障害が発生するといわれています。
口内炎を起こしやすい薬剤および治療法は非常に多く、かつ免疫を抑制するために、真菌などの感染症を併発しやすく、注意が必要です。これらの治療法を用いる場合は、口内炎の発生を想定して予防に努めることが重要です。
口内炎のrisk factorとしては、患者因子として、年齢(20歳以下、または65歳以上)、口腔内の衛生状態が保たれていないこと、歯周病、唾液分泌不全、単純ヘルペス感染、アルコールや喫煙による口腔内ストレス、義歯不整合などが挙げられます。治療因子としては、放射線治療、化学療法、骨髄抑制、好中球減少、免疫抑制、免疫グロブリンの産生減少、細菌や真菌、ウイルス感染、抗うつ薬やオピオイド、降圧薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬、抗不安薬、腎障害や肝障害、口腔内乾燥症があります。

医薬品副作用解説-19 がん患者でみられる副作用(脱毛)

発行日 2018-08-07 / 発行年 平成30年

vol.27,No.1 

がん薬物療法における脱毛は、老若男女問わずつらい副作用です。「脱毛が一番嫌だった」という患者は少なくありません。外来以外はほとんど外出しない生活になり、仕事・趣味・地域のおつきあいなどその人が続けてきたその人らしい生活が続けられなくなり、治療終了後も社会復帰が難しくなるケースもあります。外出し人と会うことは社会生活そのものであり、その時の装い(外見)は大きな関心事です。2017年10月24日に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」では、「がんとの共生」を念頭に、仕事と治療の両立、がんに対する偏見、治療に伴う外見変化などに関して、民間団体や患者団体、関連学会が協力・連携しながら支援体制を検討していくことが明記されました。外見へ自信をもち自己イメージを受け入れることは、がんと向かう姿勢と強く関連し、身体や心の機能が高いことや周りの人々との良好な人間関係を築くことにもつながります。

医薬品副作用解説-18 がん患者でみられる副作用(悪心・嘔吐)

発行日 2017-09-01 / 発行年 平成29年

vol.26,No.1 

がん化学療法における悪心・嘔吐は、患者が最も苦痛に感じる副作用と考えられていましたが、近年、セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬やニューロキニン 1(NK1)受容体拮抗薬の開発により、悪心・嘔吐で苦しむ患者は減小しています。強い悪心・嘔吐は、しばしば食欲不振、脱水、低栄養、電解質異常などを引き起こし、抗癌剤投与の患者拒否やコンプライアンスの低下を招き、治療の継続が困難になることがあります。

医薬品副作用解説-17 がん患者でみられる副作用(下痢)

発行日 2016-10-01 / 発行年 平成28年

vol.25,No.4 

抗がん剤治療中に見られる下痢には、薬物によって副交感神経が昂進し、腸の動きが活発になって起こる“早発性の下痢”と腸の粘膜障害によって起こる“遅発性の下痢の 2 種類あります。早発性下痢はコリン作動性であり、抗がん薬投与後、数時間以内に出現します。仙痛や鼻汁、流涙、流涎などのコリン症状を伴います。腸の粘膜障害による遅発性の下痢は、軽重の差はあれ、多くの抗がん剤でみられる症状で、投与数日後に発症するのが普通です。

医薬品副作用解説-16 がん患者でみられる副作用(皮膚障害)

発行日 2016-08-01 / 発行年 平成28年

vol.25,No.3 

がん薬物療法では重篤な副作用の発現頻度が高く、患者の QOL を大きく低下します。特に重篤な場合は、治療の継続や治療強度の維持が困難になります。このため、適時的確な対策をとることで重篤な有害反応の軽減に加えて、がん種やレジメンによっては用量強度の維持による治療成績の向上にもつながります。支持療法についても、エビデンスに基づく適切な対策を講じる必要があります。

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